【相続登記と担保権の抹消忘れ】

私どもの法人では、相続登記の依頼を受けることが比較的多いのですが、その際に、債務は弁済したにもかかわらず担保権抹消登記をし忘れた状態になっているケースに遭遇することがあります。

担保権の抹消忘れをそのまま放置しておきますと、いざ、その不動産の買い手が見つかったので売却したいとか、その不動産を担保にして金融機関から借り入れをしたい、あるいは、地方公共団体が主催している空き家バンクに登録したい等の手続を進める際に、担保権の抹消手続に数か月もかかってしまい、本来意図した手続をスムーズに進めることができなくなることもあり得ます。

私が、過去に相続登記を受託した際に遭遇したケースをご紹介します。なお、抹消登記を申請するまでに要した期間は、①は約1か月弱、②は約6か月、③は約2か月程度でした。

①被相続人の生前にすでに住宅ローンを完済し、金融機関からは抵当権抹消登記に必要な書類一式を受領していたが、それらの書類を紛失してしまっていた。そこで、あらためて金融機関から必要書類一式の再交付を受け抹消登記の申請をしたケース

②被相続人の生前にすでにローンは完済していたものの抹消登記をしていないことがわかり、相続登記のタイミングで抹消登記を行おうとしたところ、担保権者であるノンバンクが既に解散して無くなっていることが判明した。ノンバンクの清算人を探したがすでに亡くなっていたため、裁判所に清算人選任を申立て、裁判所が選任した清算人の協力を得て抹消登記の申請をしたケース

③今回の相続人の曾祖父が、明治44年に個人Aさん(現在は所在不明)から金35円を借入れ抵当権を設定したが、その登記が抹消されずそのままとなっていた。そこで、今回の相続人が相続登記を行った後、いわゆる休眠担保権の抹消規定を活用し、元本、利息及び遅延損害金の合計金480円を弁済供託したうえで、相続人単独で抹消登記の申請をしたケース

一般の方にとっては、人生で数回しか経験することのない相続登記ですが、担保権の抹消忘れがないかどうかに気付くことのできる貴重なタイミングといえます。私どもの法人では、担保権の抹消忘れがある場合には、相続登記の機会にあわせて担保権の抹消登記も行うことをお勧めしております。

(2017/9/22)

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